George Kellerman / 500 Startups

Global Osaka Innovationの企画でシリコンバレーを訪問している日本人スタートアップのみなさんが参加された、500 Startupsでのピッチコンテストを取材させて頂く機会に恵まれました。その中で、500 Startupsのベンチャーパートナーで今回のコンテストのジャッジを務めたGeorge Kellerman氏に日本人のスタートアップについてお話をお伺いしました。


■今回を含め、日本人のピッチを聞く機会は多いと思うのですが、日本人のプレゼンに共通する傾向のようなものはありますか?

はい、今日も少し話しましたが、多くの日本人のプレゼンで共通する問題点が3つあります。それは、1.英語、2.自信、3.練習の3つです。特に3の練習が圧倒的に足りません。ピッチは回数をこなせばこなすほど、確実に良くなります。ところが残念ながら日本では、投資家を相手にピッチをする機会がほとんどありません。ここのスタートアップは少なくとも年間40〜50回のピッチをこなしています。ピッチを何度もこなしていると、かならず一つの成功するフォーマットにたどり着きます。日本人のピッチに共通する4つ目の問題点をあげるとすれば、この「フォーマット」の欠如でしょう。

シリコンバレーで一般的なピッチのフォーマットは、「問題が何か、それをどう解決するか、なぜ、自分がそれをするのに最も適しているのか」という流れです。多くの人が問題点を見つけることができます。その解決策を思いつく人も少なくありません。しかし、それを商品やサービスに作り上げ、ビジネスとして成り立たせる仕組みを作り、広く売り込む方法を持っているかが肝心なのです。さらに、もしすでにユーザがいるのであれば、何人のユーザがいて、何回ダウンロードされて、一日のページビューがいくつでといった数字が日本人のプレゼンでは全く見られません。

■プロダクトやサービスについてはどうですか?日本人に共通する傾向はありますか?

ここ数年で特に、若い日本人の間で起業への関心が急速に高まっているのを感じます。就職難もその理由のひとつかもしれません。最近こうした日本人学生のピッチで目立つのは、ソーシャルゲームです。誰もが次のGREEやDeNAになりたいようです。そして、ソーシャル・ネットワーク系のビジネスも多く見られます。しかしこれらは、起業プランとしては最も厳しいエリアです。この業界はゆっくり成長するということがあり得ません。急成長するか失敗するかのどちらかで、その中間は無いのです。

ここ、500 Startupsでは確実にお金になるビジネスを探しています。そのためには10億人のユーザがいる必要はありません。たとえ千人、1万人でも確実にお金を払ってくれるユーザがいて、その数が増えているのであれば素晴らしい事です。大儲けをするには数年かかるかもしれませんが、それは問題ではありません。投資家の運用するファンドは10年単位ですから、5年から7年後にリターンがあればそれで良いのです。

多くの起業家が、ソーシャルゲームやソーシャルネットワークを一から作り直すことに無駄な労力を使いすぎているように感じます。例えば、アメリカで流行っているAirBnBやUberのサービスを日本で始めたらどうでしょうか?日本では業界の結束が強く、多くの規制があり厳しいとは思いますが、需要は確実にあります。でも、だれもやろうとしませんね。

みんな呪文のように「グローバル、グローバル」と言いますが、良い商品とマーケットがあればグローバル展開する必要はありません。日本市場だけをターゲットにしても十分に巨大なマーケットです。起業するならグローバルでなければいけないというのは間違った考えです。

こうした、日本人スタートアップに共通する問題の根底にあるのは、彼らがビジネスの経験が少ない事も大きな理由の一つだと思います。多くの人は、アメリカのスタートアップは18歳〜24歳の若者というイメージを持っているようですが、それは間違いです。実際のアメリカの起業家の平均年齢は20代後半から30代前半です。彼らは、大学を卒業して社会に出て、4−5年の経験を積んだ上で、ビジネスのアイデアが生まれ、自分の会社でそのアイデアを実現しようとするものの、様々な障壁にぶちあたり、それを諦めて自分で起業することを考えるのです。

その段階で彼らは、実社会の経験を持っているわけです。ところが、多くの若い日本人起業家はビジネスの経験が全くありません。製品をつくりあげる力はあるかもしれませんが、それを売るためのマーケティングやセールスについての実社会での経験が圧倒的に不足しているのです。そうした仲間を見つけてチームに加えるべきなのかもしれません。

残念ですが、起業の助けになる実社会の経験という意味では、日本の企業では学べるものは少ないかもしれません。日本の企業ではその会社のやり方を押し付け、外で役立つ力をつけることを奨励しません。日本の企業では外部で経験を積んだ人よりその会社のやり方をよく知っている社員を優先して管理職につける傾向があるように見られます。

■では、日本の起業家を育てるには何ができるのでしょうか?

革命をおこさなければいけません。我々がこれまでに日本で投資したビジネスのリーダーの8割以上が、日本以外でビジネスを経験したことのある外国人か帰国子女です。アメリカの会社で働いた経験があるからこそ、日本の常識にとらわれずビジネスを起こすことができるのです。日本はゆっくり変わってきているかもしれませんが、残念ながらいまの変化の速度では間に合いません。一夜にしてルールが変わってしまうような大きな変化が求められています。

日本は、これまで明治維新と第二次世界大戦をきっかけに大きく成長しました。今求められているのはこの規模での変革です。2011年の地震は日本に大きな変革をもたらすチャンスでしたが、残念ながらそうはなりませんでした。

日本人は、決まりやお約束に縛られすぎて、新しい自分のアイデアを試すことができないのではないでしょうか。Daveが大阪で話したように、「出る杭」になる人を増やさなければいけません。アメリカで成功した起業家の多くがルールを破ってビジネスをスタートしました。国によっては、犯罪者とよばれるような無茶をして成功したのです。日本人はルールの中で上手にやることには長けていても、ルールを破って書き換える勢いがありません。新しいビジネスはルールを破る人がいて進んでゆくのです。そこが今の日本に最も足りないところです。



最初から厳しい内容のインタビューですが、この後、「出る杭候補」の日本人学生らの熱いピッチの内容とインタビューを紹介します。