SFOでの出来事と「出国済み」の疑問
先日、サンフランシスコ国際空港(SFO)で起きたエミレーツ航空の一件が話題になりました。
H1-Bビザ情報で離陸直前の機内で混乱、「降ろして!」 – シリコンバレー地方版
H1Bビザに関する突然のルール変更を受け、すでに飛行機に搭乗した乗客が「やはり降りたい」と申し出たところ、機長が特例として降機を認めたのです。
ここで編集長が抱いた疑問は、
「飛行機に乗り込んだ時点ですでに出国済みなのでは?」
という点です。今回はH1-Bビザの人が出国中に条件が変わって再入国ができなくなったり、スポンサーである会社が更新に必要な10万ドル払わないという決定をしてしまうと、もうアメリカに入国できなくなると考え、飛行機を降りたのだと考えられますが、飛行機に乗っている時点で出国手続きは完了していて、再びアメリカに入るために入国審査を受け直さなければならないのでは、と考えるのが自然です。
そもそも、日本のような出国ゲートや出国スタンプがないアメリカでは、どの時点で出国になるのでしょうか。
アメリカに「出国審査」がない理由
実はアメリカには、日本のような「出国審査」や「出国スタンプ」が存在しません。出国管理は航空会社の搭乗記録と連結しています。
理由1:入国審査を重視する制度
アメリカは「出る人」を直接管理するのではなく、「入る人」を徹底的に管理する仕組みをとっています。出国の確認は航空会社の搭乗データで代替し、政府がそれを受け取って記録するだけです。
理由2:陸続きの隣国との往来
カナダやメキシコと陸路でつながっているため、すべての人に出国スタンプを押す仕組みは現実的に運用が難しいという背景があります。
理由3:電子データによる管理
航空会社は APIS(Advance Passenger Information System) を通じて乗客データを事前送信します。これにより、誰がいつどの便でアメリカを出たのかは電子的に把握され、紙のスタンプやブースでの手続きは不要となっています。
では、いつ「出国した」とみなされるのか?
実際には次のように整理できます。
- 搭乗=出国完了ではない ゲートを通って機内に入った時点では、出国データは送信されるが確定ではなく、まだアメリカ国内にいる扱い。
- 飛行機が離陸して領空を離れた時点で、航空会社が「乗客名簿(manifest)」を送信し、事前に送ったデータと合わせて実質的に「出国済み」と記録される。
- もし離陸前に降機したり、搭乗手続きをしたのに飛行機に乗らなければ、再入国手続きは不要。
- 一方、離陸後に機材トラブルなどで飛行機が引き返して戻った場合は、再入国審査が必要になる。
今回のSFOのケースで乗客が問題なく降りられたのは、飛行機がまだ地上にありマニフェストが送信されていなかったため、「乗客は法的には米国内にいた」状態だったからです。
日本との違い
日本をはじめ多くの国では、出国時に必ず審査官の前でパスポートを提示し、スタンプを押されます。これが公的に「出国した証明」となります。
一方でアメリカでは、スタンプも審査官もいません。
「入国管理を重視、出国は電子データで管理」という発想の違いが、この曖昧さの根本にあります。
陸路出国の場合(カナダ・メキシコ)
- アメリカ側では出国審査がない
→ 陸路の国境で「アメリカを出る」という手続きは基本的に行われません。
→ つまり、米国CBPは「誰がいつ出国したか」を自国側で直接記録していないのです。 - カナダやメキシコの入国記録に依存
- 2011年以降、アメリカとカナダは 「Entry/Exit Information System」 という情報共有の仕組みを導入しました。
- カナダに入国した記録をアメリカ側では「出国」として扱う。
- 逆に、アメリカに入国した記録をカナダ側では「出国」として扱う。
- つまり、カナダとの間では「相手国の入国=自国の出国」として記録されるわけです。
- メキシコについてはカナダほど制度化されていませんが、特定のプログラムや一部の出入国データは共有されています。
- 2011年以降、アメリカとカナダは 「Entry/Exit Information System」 という情報共有の仕組みを導入しました。
まとめ
エミレーツ航空のニュースは、アメリカの「出国」という概念のユニークさを改めて浮き彫りにしました。
- 離陸前に降りれば、まだ国内扱い
- 出国は航空会社データと電子記録で管理
- 日本やEUのように「出国スタンプ」がパスポートに残らない(日本も自動化ゲートではスタンプ省略)
グローバルに移動する私たちにとって、こうした制度の違いを知っておくことは意外と大切です。




