アメリカで飲酒運転で捕まったらどうなる? 初犯でも逮捕・保釈・前科・ビザへの影響まで完全解説

Uberが普及した現在、飲酒運転をしない選択肢が増えましたが、「アメリカは飲酒運転社会」「飲み屋に駐車場があるのだからOK」「最後にお茶飲めばOK」など謎のマイルールで飲酒運転をする人を多く見かけます。日系コミュニティのイベントでも車で帰宅するはずの人が普通にアルコールを飲んでいます。
そんな油断が、アメリカでは一晩で人生を大きく変える出来事につながることがあります。飲酒運転(DUI:Driving Under the Influence)は、日本とは比べものにならないほど厳しく取り締まられ、初犯であっても逮捕、拘留、前科、免許停止、ビザ審査への影響といった一連の処分が連鎖的に進んでいきます。ここでは、もしもベイエリアで飲酒運転により逮捕された場合、実際にどのような流れになるのかを最新の法改正の動きや企業対応まで含めて解説します。。

停止の瞬間から逮捕まで

まず、飲酒検問や通常の交通取締りでパトカーに停止を命じられたら、冷静に行動することが大切です。安全な場所に車を止め、エンジンを切り、両手はハンドルの上に置いて警官から見えるようにします。

警官は飲酒の有無や行き先について簡単な質問をした後、呼気検査や歩行テストなどの簡易検査を行うことがあります。アルコール濃度(BAC)が0.08%を超えると、ほぼ確実にその場で逮捕されます。検査を拒否すると「黙示同意法(Implied Consent Law)」に基づき免許が即時停止される場合もあるため注意が必要です。

逮捕が決まると、その場で手錠をかけられパトカーで拘置施設へ移送されます。車はレッカーで押収され、後日300〜500ドル程度の費用が請求されるのが一般的です。この時点で、単なる交通違反ではなく刑事事件として扱われることになります。

拘留と留置施設での一晩

逮捕後は郡の拘置施設に移送され、指紋や写真の撮影が行われ、所持品は一時的に没収・保管されます。多くのケースでは数時間から12時間程度拘留され、酔いがさめるまで「ドライアウト・ルーム」と呼ばれる部屋で過ごします。

この間は携帯電話の使用はできませんが、施設内の公衆電話(有料)から家族や友人、弁護士、保釈業者などに連絡することが可能です。電話は録音されている場合があるため、事件の詳細について話すのは避けたほうがよいでしょう。家族や知人には、荷物や現金の準備を依頼しておくと後の手続きがスムーズです。

飲酒で捕まる予定がある人は下記の連絡先を控え、家族にも保釈金の手順を説明しておくとよいでしょう。

  • 家族・友人:身元引受人、荷物や現金の用意を依頼
  • 弁護士:可能なら早めに相談(「DUI専門弁護士(DUI attorney)」がいる)
  • 保釈業者(Bail Bondsman):保釈金が支払えない場合の代行

保釈の仕組みと具体的な流れ

「保釈(Bail)」とは、裁判に出廷するまで逃亡しないことを条件に一時的に身柄を解放する制度です。初犯のDUIでは5000〜1万ドル程度の保釈金が設定されるのが一般的で、再犯や事故を伴う場合はそれ以上になることもあります。

保釈金の支払い方法は二つあります。ひとつは全額を現金またはキャッシャーズチェックで支払う「現金保釈」です。この場合、裁判にきちんと出廷すれば全額が返金されます。もうひとつは「保釈業者(Bail Bondsman)」を利用する方法で、保釈金総額の約10%(たとえば1万ドルなら1000ドル)を手数料として支払うと、残りを業者が立て替えてくれます。ただしこの手数料は返金されません。

保釈金を現金で用意できる場合でも、実際の釈放までには書類の提出や条件確認など、いくつものステップがあります。家族が英語や法律用語に慣れていないと、手続きに時間がかかることも珍しくありません。そのため、たとえ費用がかかっても、書類や流れに精通した保釈業者(Bail Bondsman)を通す方がスムーズに進むケースが多く、結果的に早く釈放される可能性が高まります。

サンノゼのカウンティジェイルの近く、North First沿いに沢山見られる「Bail Bonds」の看板はこのためだったのですね。

家族や友人が代理で保釈手続きを行う場合、本人確認書類や現金(またはキャッシャーズチェック)、被拘留者のフルネームと生年月日、Booking番号などが必要です。事件番号が分かっていると手続きがよりスムーズになります。保釈完了までの時間は数時間から半日程度が目安で、夜間や週末の場合は翌朝まで待つことになるケースも珍しくありません。

DMVによる免許停止

刑事手続きとは別に、行政処分として免許の停止が進行することも見逃せません。逮捕の現場で免許証は没収され、代わりに30日間有効な仮免許が発行されます。この間に10日以内にDMVへ「聴聞会(Hearing)」を申請しないと、自動的に免許が停止されてしまいます。

初犯では4〜6ヶ月の免許停止が一般的です。再犯やアルコール濃度が高かった場合は1年以上の停止や、車に呼気測定器(インターロック)を設置する義務が課されることもあります。

裁判と判決

逮捕から数週間から1ヶ月後に裁判が開かれます。多くの場合は「軽犯罪(misdemeanor)」として処理されますが、前科として記録が残る点は軽く考えてはいけません。初犯でも1500〜3000ドルの罰金、3〜9ヶ月の飲酒運転講習プログラム、1〜3年の保護観察などが科されるのが一般的です。

再犯や人身事故を起こした場合は「重罪(felony)」として扱われ、実刑判決や服役の可能性も出てきます。こうした記録はFBIや移民局のデータベースに残り、将来さまざまな場面で影響を及ぼすことになります。

ビザ・入国審査・永住権への影響

日本人が特に注意すべきなのは、DUIが移民法上「刑事事件」として扱われる点です。非移民ビザ(学生、就労、駐在など)を更新する際には過去の刑事記録の申告が求められますし、再入国時には「別室審査(Secondary Inspection)」に回され、詳しい事情を聞かれることもあります。

永住権や市民権の審査では「品行(moral character)」の評価が下がる要因となり、不利になる可能性があります。また、飲酒問題が疑われると移民局指定の健康診断で追加検査を求められることもあり、審査そのものが長引くリスクもあります。

現地駐在員が逮捕された場合の企業対応

企業が派遣した駐在員がDUIで逮捕された場合、その対応は企業や事案の重大性によって異なりますが、共通しているのは「法務・人事・本社への即時報告」と「雇用上の判断プロセス」が並行して進む点です。

一般的な流れとしては、まず本人からの連絡を受けて、現地法人の人事または法務担当が弁護士の手配を行い、保釈金の支払い支援や裁判対応のサポートを行います。派遣契約上の義務に「法令遵守(compliance)」が含まれている場合、会社が内部調査を行うことも珍しくありません。

初犯で軽微なケースでは「厳重注意」「アルコール教育プログラム受講の義務付け」といった社内処分で済むことがありますが、再犯や事故を伴った場合は「本社送還(強制帰任)」や「契約解除(解雇)」に至ることもあります。特に日系企業では、DUIは企業イメージに直結するため、本人が望まなくても早期帰国を命じられる例が少なくありません。

米国現地法人の中には、再入国審査でのリスクを理由に、就労ビザのスポンサー継続自体を断念するケースも報告されています。つまり、DUIは「一時的なトラブル」ではなく、「キャリア全体を左右する事案」として企業も判断するのが一般的です。

保険料・就職・社会的信用への波及

飲酒運転の影響は裁判で終わりではありません。自動車保険料は数年間にわたり2〜3倍に跳ね上がり、前科があると就職や転職の際のバックグラウンドチェックにも表示される可能性があります。ボランティア活動や学校行事への参加制限がかかる場合もあり、信用スコアや賃貸契約、ローン審査に影響するケースもあります。

新たな法改正の動き:H.R.875の影響

2025年、米連邦議会には「Jeremy and Angel Seay and Sergeant Brandon Mendoza Protect Our Communities from DUIs Act(H.R.875)」という新たな法案が提出されています。この法案は、再犯者や高濃度の飲酒運転者に対する罰則強化、州と連邦の協力体制の整備、データ共有の促進、飲酒運転の定義の見直しなどを含むもので、成立すれば現行制度はさらに厳格化される可能性があります。

特に、再犯時の保釈基準や免許停止期間、初犯でも罰金上限が引き上げられる可能性があり、州ごとにばらつきのあるDUI処分が全国的に統一される可能性も指摘されています。今後は、州法だけでなく連邦法の改正動向にも注意を払う必要があります。

この動きについては、サンフランシスコ領事館からも下記の注意勧告が出されています。

在留邦人及び渡航者の皆様におかれては、米国において、不法入国、不法滞在、法令違反行為(査証・滞在資格外活動や飲酒運転等)を行った場合、逮捕・拘留されたり、多額の罰金が課されるリスクがあることを改めて十分に認識願います。また、米国査証発給後や米国入国後も、SNS上での言動も含め、米国による保安審査の対象となり続ける可能性があります。その結果として、米国滞在許可条件を遵守していないと判断された場合、査証・滞在資格が取消され、国外退去等となり、その後再入国が禁止される可能性もありますので、十分御注意ください。

まとめ

「少し飲んだだけだから大丈夫」という油断は、アメリカでは通用しません。駐在や移民ビザで滞在している人にとっては失うもののリスクが大きいことをよく理解してください。飲酒運転で逮捕されると、逮捕、拘留、保釈、裁判、免許停止、前科、ビザ審査への影響、保険料の増加など、想像以上に広範な影響が人生に及びます。特にベイエリアのように公共交通や配車アプリが発達している地域では、「飲んだら乗らない」という選択肢が常にあることを忘れてはいけません。

たとえ「万が一」に備える知識があったとしても、本来それは「飲酒運転をしても大丈夫」という安心材料ではありません。どんな事情があろうとも、飲酒したらハンドルを握らないという選択以外に安全な道はありません。飲酒運転は自分自身の人生を壊すだけでなく、他人の命や未来を奪う可能性がある重大な犯罪です。たった一杯の油断が、家族、仲間、そして見知らぬ誰かの人生を取り返しのつかない方向へと変えてしまうかもしれません。

そのうえで、もし不幸にも事態が起きてしまった場合に、誰に連絡し、どのように行動すべきかを知っておくことは、せめてもの冷静な判断につながります。しかし、最も大切なのは「そもそもその状況に陥らないこと」です。「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」――この当たり前の約束こそが、自分と周囲の安全を守る唯一の方法です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法律・移民・ビザ・雇用に関する専門的な助言を行うものではありません。実際の事案への対応や判断については、必ず弁護士、移民専門家、または関係当局にご相談ください。

Disclaimer: This article is for informational purposes only and does not constitute legal, immigration, or employment advice. For advice on specific cases, please consult with a qualified attorney, immigration specialist, or relevant authority.

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