シリコンバレーの街名は日常的によく耳にしますが、その意味や背景を知る機会は意外と多くありません。Los Gatos、Palo Alto、Cupertino、Mountain View、Milpitas といった都市は、名前の響きが独特であるため、語源を調べると予想外の事実が多くあります。
この記事では、まず「アメリカの地名はどのように決まってきたのか」という背景を紹介し、その後にシリコンバレー周辺5都市の知られていない地名の由来をまとめて解説します。
アメリカの地名はどのように決まってきたのか
アメリカの地名は、大きく次の四つのルートで名付けられてきました。
1. 先住民言語に由来するもの
先住民が使っていた名称を英語表記に変えてそのまま採用したものです。
Milpitas の語源である milpa(トウモロコシ畑)はナワトル語に由来します。
2. スペイン統治時代の名称
カリフォルニアは長い間スペイン領であったため、聖人名や自然地形、動物名をスペイン語でそのまま地名にした例が多く残っています。Los Gatos、Palo Alto、San Jose、Santa Clara などがその典型です。
3. 開拓者や地主の名前がそのまま採用されたもの
Campbell や Fremont のように、人名をそのまま地名にしたケースです。ただし、人名由来は特別な背景がないと物語性が弱いことが多い傾向があります。
4. 鉄道や郵便局の便宜上の名称が街名になったもの
19世紀には、駅馬車や鉄道の中継地点の名称が集落名として定着し、正式な市名になった例も多くあります。Mountain View はその代表です。
シリコンバレーの地名は、これら複数の歴史的文脈が重なった結果、現在の形に落ち着いています。
Los Gatos(ロスガトス)の語源
Los Gatos はスペイン語で「猫たち」という意味ですが、ここでいう猫はペットの猫ではありません。かつてこの地域にはマウンテンライオンやボブキャットなどネコ科の野生動物が多く生息しており、夜になると鳴き声が響いていたため、「猫たちのすみか」という意味の El Rincón de Los Gatos と呼ばれました。
現在の落ち着いた住宅街のイメージとは対照的に、名前のルーツは野生動物にあります。
Palo Alto(パロアルト)の語源
Palo Alto はスペイン語で「高い木」を意味します。語源になったのは、実際に存在する一本の巨大なレッドウッドで、スペイン探検隊がランドマークとして利用した El Palo Alto という木です。この木は現在も鉄道橋の近くに残っており、樹齢は千年以上と推定されています。スタンフォード大学の紋章にも描かれ、市の象徴になっています。
Cupertino(クパチーノ)の語源
Cupertino の語源はイタリアの聖人 Joseph of Cupertino に由来します。スペイン探検隊が現在のクパチーノ周辺を流れる川を Arroyo San José de Cupertino と命名し、その川の名前が後に街の名前として定着しました。
なお、インターネット上で広まっている「ゴミ捨て場の丘(Monte Copertino)」説は誤解であり、実際の語源とは無関係です。Cupertino は聖人名から川へ、そして地名へとつながる正統な由来を持つ街です。
Mountain View(マウンテンビュー)の語源
Mountain View の名称は「山が見える場所」が由来です。19世紀中頃、この地域には建物がほとんどなく、西側に連なるサンタクルーズ山脈が非常によく見えました。El Camino Real 沿いの駅馬車の中継地点が Mountain View Station と呼ばれ、そのまま集落名として使われるようになりました。
現在は建物や樹木によって視界が遮られ、当時のように開けた眺望は多くありませんが、見晴らしの良い場所からは今でも東と西に山脈が見られます。
Milpitas(ミルピタス)の語源
Milpitas はメキシコ系スペイン語で「小さなトウモロコシ畑」を意味します。語根はナワトル語の milpa で、トウモロコシなどを育てる畑を指します。
一部で「千の足(thousand little feet)」と説明されることがありますが、これは mil(千)という単語に引きずられた誤解であり、実際の語源とは無関係です。かつては農地が広がる地域であったことを反映した、素朴で農業的な由来を持つ街です。


